相 続 Q&A14
主債務の相続放棄と消滅時効の援用
主債務の相続放棄と消滅時効の援用
相続についての法律手続やよくあるトラブルや疑問に具体事例を用いてわかりやすく解説します。
主債務と保証債務
主債務を相続放棄した場合保証債務はどうなるか?
相続Q&A>Q&A14
Q14
私(A)は父Bが銀行から借りた借金の保証人をしています。
父は銀行との契約どおり返済をしていましたが、4年前から返済できなくなり、先月亡くなりました。
銀行からの借入は5年間で消滅時効にかかると聞きました。
私が父の借金を受け継いだ場合、父の時効の期間も受け継げますか?
また、私が相続放棄をした場合、私の保証債務はどうなりますか?
父は銀行との契約どおり返済をしていましたが、4年前から返済できなくなり、先月亡くなりました。
銀行からの借入は5年間で消滅時効にかかると聞きました。
私が父の借金を受け継いだ場合、父の時効の期間も受け継げますか?
また、私が相続放棄をした場合、私の保証債務はどうなりますか?
A14
消滅時効とは一定期間、権利が行使されないと権利が消滅する民法で定められている制度です。
詳しくは「消滅時効」をご覧下さい。
消滅時効は借金の種類により、消滅時効の期間が異なります。
商行為や商人から借りた場合の債務は5年となり、個人が個人から借りた場合は10年です。
銀行は商人となるので、Bさんの借入は商事債権による借入となります。
※ 信用金庫、信用組合、農協、漁協、商工中金、労働金庫等は会社や商人ではなく「非営利法人」ですので、原則消滅時効の期間は10年となります。
この場合、借金の消滅時効の期間も引き継ぎますのでAさんが引き継いでBさんと銀行との間で経過した消滅時効の期間とAさんの経過した期間を併せて5年となった場合(その間時効の中断が無ければ)消滅時効が完成します。
主債務が弁済等により消滅した場合は保証債務も消滅します。
そして主債務が消滅時効期間の経過により消滅した場合についても、保証債務も消滅します。
時効の援用とは、時効によって利益を受ける者が(援用権者)が時効の成立を主張することです。
Bさんの消滅時効の期間が中断も無く4年間経過していたと仮定します。
Aさんは、債務を承継して1年経過すると(時効中断が無ければ)消滅時効が完成します。
その場合、Aさんは時効を援用して債務の消滅を主張できます。
その結果、付従性によりAさんが銀行と契約した保証債務も消滅します。
Aさんが相続放棄した場合、Bさんの債務を承継しないことになります。
AさんのほかにBさんの相続人がいない場合は、主債務はどうなるのでしょうか?
主債務は「相続財産法人」が引き継ぐことになります。
相続財産法人とは、引き継ぐ相続人がいるかどうか不明の場合の相続財産の集合体のことです。
相続人のあることが明らかでないとき、相続財産は法人とされて家庭裁判所が相続財産管理人を選任し、相続財産管理人が相続財産の管理及び精算を行い、その後相続人が現れない場合、特別縁故者に全部又は一部を分与し、残余財産は国庫に帰属することになります。
民法951条
※家庭裁判所が相続財産管理人を選任するには、利害関係人等が家庭裁判所に「相続財産管理人選任」の申立てをしなければなりません。
民法952条
相続放棄した場合でAさんの他に相続人がいた場合は、他の相続人が主債務を引き継ぎ、Aさんの保証人の立場は変化無く、主債務者がBさんから他の相続人に変更となり、その主債務の保証債務となるということです。
Aさんの他に相続人がいない場合、主債務は相続財産法人となるので、保証債務は上記の場合と同様存続します。
よって、Aさんは、Bさんの財産を相続した場合でも、相続放棄した場合でも、保証債務は
存続するということになります。
保証人と主債務の消滅時効の関係については「消滅時効Q&A8」をご覧下さい。
保証人が主債務者を相続した場合の主債務の消滅時効を援用できるか?について最高裁の判例を引用して解説しています。 消滅時効
但し、債務者が個人事業主や中小企業で借り入れ目的が「事業資金」等事業目的の場合は「商事債務」となりますので、商事債権の時効期間となり、5年となります。 消滅時効の承継
AさんはBさんの相続人なので、プラスの財産とマイナスの財産(債務等)も相続により引き継ぎます。
(このことを承継といいます)
(付従性といいます) 消滅時効の援用
時効による権利の取得・消滅は期間の経過により自動的に発生するものではなく、援用があってはじめて確定的に取得の権利が生じたり、権利が消滅するものです。
(保証人は主債務の消滅時効を援用できます。 大正4年7月13日大審院判決 保証人が主債務の消滅時効の援用ができる) Aさんが相続放棄した場合
相続放棄とは家庭裁判所に申立てることにより、プラスの財産もマイナスの財産も承継しないことです。
消滅?いえいえそうなりません。 相続財産法人
相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。 相続放棄した場合の保証債務の影響
「消滅時効Q&A9」をご覧下さい。
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相続とは
相続とは、亡くなった方(被相続人といいます)の財産や権利・義務について承継することです。財産等を承継する人(相続人といいます)は、民法で定められています。
被相続人の一身に専属したものは相続財産に含まれません(民法896条)
相続において(場合によって)必要となる各種法律手続や用語については「相続手続」をご覧下さい。
相続の流れについては「相続の流れ」をご覧下さい。
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